1820年のエルステッドの「電磁気」の発見は科学者を次の課題に駆り立てた。「電流が磁場をつくる」なら「磁場から電流を得る」ことができるのではないかという課題である。1832年、ファラデーは「変動する磁場」が電流をつくることを見出した。電磁誘導の発見である。
1)実験 ー 運動する磁石とコイル
2)ファラデーの電磁誘導の法則
上の実験から、コイルを抜く磁場の時間変化の大きさによってコイルに生起する電流(誘導電流)の大きさが変化することが分かったが、コイルに誘導されるのは電圧(誘導起電力)であり、その結果として電流が流れると考えられる。
Fig.3 コイルを抜く磁場Bが時間と共に大きくなるとコイルの両端に起電力が生じる。 逆に磁場が時間と共に小さくなっても逆向きに起電力が生じる。
Fig.4 誘導起電力VはBの時間変化に比例するだけでなく、コイルの面積の磁場に垂直成分Acosθとコイルの巻数Nに比例する(ファラデーの電磁誘導の法則)。
2)「電流の流れる向き」に関するレンツの法則
誘導電流の流れる向きについては、「レンツの法則」が知られている。
Fig.5 レンツの法則:「誘導電流は、それを引きおこく変化を妨げる向きに流れる。」
上の図では、接近する磁石がコイルに及ぼす磁場の増大を妨げるように、逆向きの磁場を生じるように、コイルに電流が流れる。
Fig.6 レンツの法則は、「来るな」「行かないで〜」の法則。
3)マイクロフォン
スピーカーと基本構造が同じだ。
Fig.8 紙コップマイクロフォン
組み立て方と完成図
Fig.9 紙コップマイクロフォンはそのままスピーカーとしてはたらく。
4)発電機
静電気、ボルタ電池などで知られていた電気は、電磁誘導の発見の結果、磁石とコイルから生産できることになった。連続生産のためには、磁石中でコイルを回転させる。構造はモーターと同じである。この場合は、磁石は動かずコイルが動いている。
5)磁場中を運動する導線中の電流の向きを求める
磁場の中で動く導線に生じる電流の向きはレンツの法則を適用して求められる。より簡便な方法として、右手を用いるのが便利である。Fig.13かFig.14のどちらかが使えれば良い。試してみると、Fig.14の右手のひら「力・磁-->電」法が無理がなく合理的であることがわかる。
Fig.12 (レンツの法則による説明)磁場中の導線に力Fが加わったとき、それを「妨げる」逆向きの力がはたらくように電流が流れる。
Fig.13 右手3本指の「力・磁・電」則
(フレミングの右手則)
Fig.14 右手のひら「力・磁-->電」則
6)発電機の原理と交流発電
発電機において、コイルが回転する向きとそれによって生じる電流の向きは下のFig,13で説明できる。また、交流発電機の電圧の時間変化はファラデーの電磁誘導の式からFig.16のように求められる。
Fig.15 コイルの回転と電流の向き
(左:レンツの法則による説明)コイルの回転を妨げるようにabcdの向きに電流が流れる。
(右:右手則による説明)コイルの辺abに力が加わるとa→bの向きに電流が流れる。辺cdではc→dの向きに電流が流れる。
Fig.16 ファラデーの電磁誘導の式で、時間と共に変化するのは磁場に対するコイルの角度θのみであり、θ=2πft。fは回転速度[rad/s]。
7)練習問題
Fig.17 検電器の針はどちらに振れるか?
Fig.18 検電器の針はどちらに振れるか?
Fig.19 検電器の針はどちらに振れるか?
Fig.20 落ちていくリングに流れる電流の向きは?CW時計回り、CCW反時計回り、あるいはNなし?
Fig.21 黒が濃いほど磁場が強いことを示す。右に動くリングに流れる電流の向きは?CW、CCW、あるいはN?
Fig.22 右に動くリングに流れる電流の向きは?CW、CCW、あるいはN?。
Fig.23 電荷量がゼロコンデンサーCの周囲の磁場の強度が増大している。正電荷が溜まるのはaかbか?