見えない「音」を見る実験に「クント管」がある。粉などを入れた透明な管の中に音を送り込んで粉の動きを観察するというものだ。私は見たことがなかったが、とても印象的なものであると聞いていた。透明な管とそれに合うスピーカーについて、安価で、組み立てが容易でその具体的な提案を記した論文を The Physics Teacher紙( 2016) に見つけ早速製作し、実験をした。

  

1)実験に用いた材料

Fig.1 蛍光管飛散防止用のポリカーボネート製チューブ(43.1mmφ、2.4m)
Fig.2 プラスチックチューブにぴったりはまるサイズのホーンドライバースピーカー
 Fig.3 スタイロフォームの微粒子 平均径3mm(中央は1セント硬貨)
Fig.4 コルクの微粉末
Fig.5 周波数発振器、アンプ、スピーカー、管
 Fig.6 
  iPod Nano

「透明な管」として、蛍光管を保護するプラスチックチューブを使っているのが特徴である。この管はアメリカでは手に入りやすく、安価、軽量であり管の内壁が傷んでも交換が容易であり学校の装置に適している。アメリカでは$5.47でHomeDepotなどで容易に入手できた。日本でも同様な製品があるが規格が違うようだ。この管にサイズがぴったり合い、出力も400Wと大きいホーンスピーカー(Pyle PDS341)はアメリカで$21.53で購入した。日本ではAmazonなどで輸入販売している。

2)スタイロフォームの微粒子を用いた実験

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Fig.7 1000 Hzの音を送った時の状態  (微粒子の量: 2.2g)

 Fig.8  実験装置の外観と1000 Hzの音を送った時のスタイロフォーム微粒子の状態

管の内径(34.4mm)に比べてスピーカー突起部の外径(43.1mm)が少し大きいので突起部にプラスチックテープを巻いて管に差し込んだ。管の他端はプラスチックフィルムをゴムバンドで塞いだ。スタイロフォーム微粒子(2.2g)を管内に入れて音を送り込むと、山と谷がきれいに並び、管の端は谷になっている。山は、およそ1.5cmの間隙を開けて粒子が束になって立ち上がっている。山と山の間隔は約17cmで、音速を340m/sとしたときの波長λの1/2に等しい(v=fλ)。波の節と腹についてはよくわからないが、管の両端が腹でスタイロフォームが盛り上がっているところが節だと思われる。

写真、ビデオおよびイラストからわかるように、スタイロフォームの微粒子がきれいに並んで微細構造を形成して動く様が興味深い。この微細構造が形成されるメカニズムはよくわからない。

3)コルクの微粉末を用いた実験


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Fig.9 1000 Hzの音を送った時の状態  (コルク微粉の量:3.0g)

コルクが堆積している砂丘のような部分と薄い壁のように立ち上がって整然と並ぶ微細構造部分に分かれている。ビデオでは最初は700Hzでその後1000Hzに変化させている。この点がスタイロフォームと大きく違っている。節と腹についてはよくわからず、今後の検討課題である。

微細構造部分は、音を停止した後でも崩れずに形を保持している。

4)音楽を流したときの観察

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Fig. 10
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Fig.11
"Take five"はコルク粉末がダンスをする様子が面白い。"Watermelon man"は、スタイロフォーム微粒子とコルク微粉末を比較できる。コルク微粉末の方が動きがはっきりしている。

まとめ

スタイロフォーム微粒子もコルク微粉末も、管の中の音の定常波の状態を可視化していて興味深い。微細構造についてはその生成のメカニズムに研究の余地がある。今回は、私自身の教職の最後の時期でもあり2回しか実験ができていない。より詳しい検討が望まれる。 (実験:2019年6月)

従来、クント管の実験にはガラス管かアクリル管が使われてきた。ガラス管は割れやすい欠点がある。アクリル管は耐摩耗性や耐溶剤性が悪い欠点がある。この実験で使われたポリカーボネート管は、耐摩耗性が優れ石油などの溶剤に耐性があり、アクリル管の価格の1/10程度であるという長所がある。また、採用したホーンドライバースピーカーは、指向性が良いので音量を上げた時に通常のスピーカーと比べて外部に漏れる割合が少ないと思われる。

参考文献