--- このページでは、実際の音で音高や音色を体験します。音量にご注意ください。---
     ブラウザはMicrosoft Edgeがおすすめです。Safariでは音量調整のつまみがありません。

うなりは、振動数がわずかに異なる2つの振動数の音が干渉するときに生じる、「ウワーン、ウワーン」と周期的に繰り返す現象で、2つの音源の振動数をf1、f2とするとうなりの周期は Ⅰ f1-f2 Ⅰ と表される。この説明は2個の音叉などについては正しいが、多くの振動数が倍音として含まれている通常の楽器の音ではどうなっているか、との疑問が湧く。合奏で不都合なうなりはどのような状況で生じるのだろう?また、調律(音程合わせ)にうなりを応用するのが困難なのはどのような場合だろうか?
純音を組み合わせたいくつかの音の波形と聞こえ方を検討した。
                                             2021.4.10  森谷東平

1)実験と解析

振動数発生 ソフトウェア:ToneGenerator (NCH社)
音声ファイルの作成 ソフトウェア:WavePad (NCH社)

2)「2個の音」の波形とうなり

2ー1) 2個の純音  (例:2個のおんさ)
    Frequency [Hz]
(Relative Intensity [dB])
Time Graph and Sound
B1 (Do-1 +133) Pure tone
131
(0)
- - - - - - -
Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
波形:周期2Hzの大きい振幅変化  うなり:周期2Hzで明確に聞き取れる。
    
2ー2)複合音と純音  (例: 楽器とおんさ)
    Frequency [Hz]
(Relative Intensity [dB])
Time Graph and Sound
B2 (Do-4 +133)  4 Harmonics
131
(0)
262
(0)
393
(0)
524
(0)
- - - -
Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
波形:周期2Hzの振幅変化はB1より小さい。  うなり:周期2Hzが聞き取れる。
    
B3 (Do-8 +133)  8 Harmonics
131
(0)
262
(0)
393
(0)
524
(0)
655
(0)
786
(0)
917
(0)
1048
(0)

Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
波形:周期2Hzの小さい振幅変化  うなり:わかり難い
    
B4 (Do-8redu +133)  8 Harmonics
131
(0)
262
(-10)
393
(-20)
524
(-30)
655
(-40)
786
(-50)
917
(-60)
1048
(-70)

Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
波形:周期2Hzの大きい振幅変化  うなり:周期2Hzで明確に聞き取れる。
2ー3)ミッシングファンダメンタルと純音  (例: 楽器とおんさ)
    Frequency [Hz]
(Relative Intensity [dB])
Time Graph and Sound
B5 (Do-8mf1 +133)  8 Harmonics -
262
(0)
393
(0)
524
(0)
655
(0)
786
(0)
917
(0)
1048
(0)

Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
振幅変化が小さい波形。うなりはわかり難い。
    
B6 (Do-8mf1redu +133)  8 Harmonics -
262
(-10)
393
(-20)
524
(-30)
655
(-40)
786
(-50)
917
(-60)
1048
(-70)

Pure tone
133
(0)
- - - - - - -
   
波形:周期2Hzの振幅変化(位相が異なる2個の波が重なっている)  うなり:周期2Hzで明確
2ー4) 2個の複合音  (例:2個の楽器)
    Frequency [Hz]
(Relative Intensity [dB])
Time Graph and Sound
B7 (Do-8 +Do2Hz-8)  8 Harmonics
131
(0)
262
(0)
393
(0)
524
(0)
655
(0)
786
(0)
917
(0)
1048
(0)

8 Harmonics
133
(0)
266
(0)
399
(0)
532
(0)
665
(0)
798
(0)
931
(0)
1064
(0)
   
波形:複雑な変化  うなり:周期は1Hzで通常と異なる。
    
B8 (Do-8redu
 +Do2Hz-8redu )
 
8 Harmonics
131
(0)
262
(-10)
393
(-20)
524
(-30)
655
(-40)
786
(-50)
917
(-60)
1048
(-70)

8 Harmonics
133
(0)
266
(-10)
399
(-20)
532
(-30)
665
(-40)
798
(-50)
931
(-60)
1064
(-70)
   
波形:周期2Hzの大きい振幅変化  うなり:周期2Hzで明確に聞き取れる。

4)まとめ

1.強い倍音を含む音と純音の組み合わせ(B2、B3)で5は うなりの振幅変化が小さくなる傾向があり、特に、高振動数の倍音が強い場合(B3、B5)ではうなりを聞き取るのが難しい。そのような楽器の音ではおんさ等の純音とのうなりを使用した調律が困難であることが予想される。
2.基音を含まないミッシングファンダメンタルの音(B6)でも、実際には無い基音による「振動数の差、 Ⅰ f1-f2 Ⅰ 」のうなりが明確に聞き取れる事実は興味深い。この事実をこれまで指摘した記述は私の知る限りない。その理論的な説明は今後の課題である。
3.2個の複合音の組み合わせ(B7,B8)で強い倍音を含むとき(B7)は、「基音の振動数の差、 Ⅰ f1-f2 Ⅰ 」とは異なる周期の発生が見られる場合があった。
4.以上のように、倍音を多く含む実際の楽器の音のうなり現象は純音と比べて複雑であることが予想される。(今回、楽器での検証は実施できていない。)

5)文献

1.H. E. White and D. H. White, "Physics and Music, The Science of Musical Sound" Dover Publications, Inc.(1980 original, 2014 Republication)