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振動数がわずかに異なる2つの振動数f1、f2の音が干渉するときにうなりが生じ、「ウワーン、ウワーン」と Ⅰ f1-f2 Ⅰ の周期で強弱を繰り返す。f1、f2の差がさらに大きくなるとどのような結果になるのだろうか?
純音を組み合わせたいくつかの音の波形と聞こえ方を検討した。
2021.4.14 森谷東平
1)実験と解析
音声ファイルの作成 ソフトウェア:WavePad (NCH社)
2)「振動数の異なる2個の純音を同時に鳴らした時」の音、波形、うなり、Pitch Anayzerの表示
Frequency [Hz] | Ⅰ f1-f2Ⅰ [Hz] |
Sound | Time Graph | Beat | Pitch Analyzer |
||
f1 | f2 | ||||||
D1 | 131 |
- |
- | None | 131 Stable |
||
D2 | 131 |
133 |
2 | Beat 2 Hz |
132 Stable |
||
D3 | 131 |
136 |
5 | Beat 5 Hz |
134~137 | ||
D4 | 131 |
141 |
10 | Beat | 136~139 | ||
D5 | 131 |
146 |
15 | Beat | 133~140 | ||
D6 | 131 |
151 |
20 | Beat | 140~142 | ||
D7 | 131 |
161 |
30 | None | 142~457 | ||
D8 | 131 |
171 |
40 | None | 158~473 | ||
D9 | 131 |
181 |
50 | None | 61~497 | ||
D10 | 131 |
191 |
60 | None | 64 Stable |
||
D11 | 131 |
201 |
70 | None | 66~205 | ||
D12 | 133 |
211 |
80 | None | 212 Stable |
||
D13 | 131 |
221 |
90 | None | 221 Stable |
||
D14 | 131 |
231 |
100 | None | 231 Stable |
||
D15 | 131 |
241 |
110 | None | 120/240 | ||
D16 | 131 |
251 |
120 | None | 126 Stable |
||
D17 | 131 |
256 |
125 | None | 128 Stable |
||
D18 | 131 |
262 |
131 | None | 132 Stable |
3)まとめ
1.差が5Hzぐらいまでは音で「うなり」の振動数を数えることができた。それ以上20Hzまでは「うなり」として聞こえるが振動数を数えるのは無理であった。30Hz以上ではうなりではなく一つの均一な「音」として聞こえる。しかし、iPhoneのPitch Analyzerは安定した「高さ」を示さない。これは、「音高」を示すような倍音系列の組み合わせでないとこのソフトウェアが解釈したからであろう。
2.差を60Hz (f2=191Hz)にしたとき、突然Pitch Analyzerは安定な音高として「64Hz」を示した。これは、(64) - 128 - 192という倍音系列でミッシングファンダメンタルの基音を示したものと解釈できる。
(ウィキペディア(日本版)の「差音」はこれを説明していると思われ、ミッシングファンダメンタルと同じ現象である。ウィキペディアのパイプオルガンの説明もまさにミッシングファンダメンタルによる低音の発生法の説明である。Wikipedia(英語版)の"Combination tone"の中にdifference tone(差音)の説明があり、ミッシングファンダメンタルの一例であるとしている。)
3.差を80〜100Hz(f2=211~231Hz)とするとPitch Analyzerはf2の音高を示し始め、差を120〜131Hz(f2=251~262Hz)とするとPitch Analyzerはf1=131Hz近くとなる。最後の方はは倍音系列になった、として解釈できるとしても、途中の変化は不思議である。耳で音高と音質の変化を聞いた印象では、差が15Hz以上では差が大きくなるに従って音高が連続的に高くなって聞こえ、Pitch Analyzerの示す結果と食い違っているように感じた。
4)文献
1.H. E. White and D. H. White, "Physics and Music, The Science of Musical Sound" Dover Publications, Inc.(1980 original, 2014 Republication)
2.J. Schnupp, I. Nelken, and A. King, "Auditory Neuroscience、”MIT Press (2011).