1)実験 ー コイルで放電管を点灯させる
蛍光灯や自動車エンジンのプラグなど、電極の間でスパークをさせるには数万ボルトなどの高い電圧が必要である。これらを低い電圧電源で可能とさせる技術の鍵がコイルにある。ネオン管は80V以上で電極間で放電させて点灯できる放電管であるがこれを1.5Vの乾電池と200巻のコイルを組み合わせた実験を見てみよう。
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Fig.1 コイルによるネオン管の点灯実験組立図
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2)実験(2)コイルの巻数を変えてみる
回路図のコイルの巻数を3200 ~ 200巻と変化させてネオン管が点灯するときの明るさを比較した。
Fig.3 回路図 コイルの巻数[抵抗値] Fig.4 3200巻[159Ω] Fig.5 1600巻[35Ω] Fig.6 800巻[10Ω] Fig.7 400巻[2.8Ω] Fig.8 200巻[1.2Ω] 理論式から巻数が多いコイルの方がネオン管が明るく点灯すると期待したが、結果は逆で200巻の場合が最も明るかった。コイルの抵抗の寄与が大きいようだ。
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3)実験(3)スイッチの代わりにやすりを使うと連続して点灯できる
4)自己誘導と逆起電力
コイルで高電圧が発生する仕組みを見てみよう。コイルに流れる電流が変化すると「その変化を妨げる」向きに(レンツの法則)電圧が誘導される。これを「自己誘導」と呼び、誘導される電圧を「逆起電力」と呼ぶ。
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(下)電流が減少するとき電圧 v は電流の向きと同じ向き。(式)ファラデーの電磁誘導の法則から逆起電力 vは電流の時間変化に比例してその比例定数(インダクタンスと呼ぶ)はコイルの形状で決まる定数である。
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Fig.14 スイッチSが閉じられた。
電流が増加するにつれ逆起電力がはたらくが、最終的に電池の起電力とコイルの抵抗で決まる電流値 Is で一定となる。逆起電力は消失する。
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Fig.15 スイッチSが閉じられたまま
電池の起電力とコイルの抵抗で決まる電流値 Io で一定となる。逆起電力は消失したまま。
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コイルを流れる電流は、短時間Δiの間にIoから0に変化する。逆起電力は元の電流の向きに大きな値を示し、ネオン管が点灯する。
つまり、スイッチを切るという操作で、極めて短い時間Δtでコイルの電流がゼロになり、電流に大きな時間変化が生じ、これが大きな逆起電力の発生を誘導した。「電流切断によるコイルの高電圧発生」現象と呼べるであろう。
5)「電流切断によるコイルの高電圧発生」の応用機器
コイルを用いると直流低電圧電源で一瞬高電圧が得られる。スパークを得るための重要な技術である。
誘導コイルとイグニッションシステム
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A:電磁石、B:直流電源(約10V)、C:コンデンサー、K:スイッチ、P:一時コイル、M:鉄心、S:二次コイル、G:スパーク部。 スイッチが切れると一次コイルとコンデンサーの間で高電圧の振動電流が発生し、一次コイルと二次コイルの相互誘導でさらに電圧が増幅されてスパークを生じる。電磁石の働きで連続的に作動する。
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構成はインダクションコイルと基本的に同じである。コンタクトブレーカー式はメカニズムが分かりやすいが旧式であり現在使用は稀である。
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1:イグナイター(コンピューター制御のオン・オフのスイッチ)、2:イグニッションコイル、4:ディストリビューター、6:スパークプラグ
グロー管を使う蛍光灯の点灯
![](images-8/8-8-20_FluorescentLight-1.jpg)
蛍光管にコイルとグロー管が付属している。
グロー管にはバイメタルスイッチが装備されている。
蛍光管は100~240Vでは点灯しない。
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ー管の中のバイメタルスイッチで放電が起こる。
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Fig.22 3.グロー管のバイメタルスイッチの
温度が上昇し、接続する。
4.蛍光管のフィラメントの温度が上昇する。
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以上のように、コイルは低電圧電源とスイッチとの組み合わせで高電圧を生み出すことができ、それがコイルの自己誘導によることを学んだ。コイルの自己誘導特性はこのような高電圧生成だけでなく、交流回路などで重要な役割を持つ。
6)白熱電球を用いた実験
上の実験で、ネオン管に替えて下図のように白熱電球を使用した場合はスイッチを切ったときに点灯は見られない。これは、白熱電球のフィラメントを加熱するのに十分な電流量が無いためであろう。
![](images-8/8-8-25_SwitchIncandescent.jpg)
Fig.24 白熱電球を用いた回路
7)練習問題
Fig.25 (問1)図に示すコイルのインダクタンスを求めよ。
(問2)コイルの抵抗は1.2Ωである。スイッチを閉じて十分時間がたってからスイッチを切った。コイルを流れる電流が0となるのに0.10sかかるとするとネオン管にかかる電圧はいくらか?