9 長距離列車 ー 奇跡のエローラ

アウランガーバード・ エローラ

 

12/10( 月) エローラ・アジャンタへの基地であるアウランガーバードに到着。久美子がダウン。


長距離列車  昨夕6時ごろアグラから夜行列車に乗り、延々16時間半寝台車の横になっていた。久美子が疲れているという。乗り換えのManmad駅で降り、駅前のホテルのロビーで一休み。ムンバイから来た急行は定刻の11時50分に発車したがおよそ1時間遅れて午後2時半頃アウランガーバード駅に到着した。予定していたホテルは部屋も広く気持ちがよい。久美子はそのままバタンキュー。私はせっせとお洗濯。

久美子の下痢と嘔吐が止まらず、4時頃ホテルで医者を頼む。すぐ来てくれるとのこと。嘔吐防止の注射を打って、私は処方箋の薬を買いに。4軒目の薬屋で目的の薬が買えた。医者は名医だったようで久美子の容態はだんだん良くなる。私も、腰が痛くなり今晩は早く寝よう。


12/11( 火) アウランガーバードで休養。久美子は回復方向。


のんびり  旅先で体調を崩したら、打つべき手は打って後は回復に専念すること。今日はそれを守ってのんびり。私の腰の調子も良くなった。アウランガーバードは乾燥して天気も良く、これは洗濯日和だと、上着を中心に洗濯。わ〜、泥のような洗濯水が出た。ほこりを吸っていたんだろう。

久美子も徐々に食欲は出ているようだ。昨夜、今朝ともに、食事のスパイスが効き過ぎているという。今晩は私が先にいくつか頼んで試すことにした。Dahlというインドの豆料理でスパイスなし、オイルなし、と念を押して注文。これは合格。つぎに、中華の焼きそば。これもなんとか。Sweet Corn Soupは甘くてだめだと。「春巻き」は長いのが2本現れて、まあまあと。私はすべておいしくいただきました。ここで一句。

   〜 毒味役、どれもおいしく満腹だ 〜

明日、久美子が元気になったら世界遺産見学の旅を再開しようか?


停電  インドでは、首都デリーを含めてどの町でもよく停電をする。昼間の3〜5時間ぐらい電気が来ないことが日常的である。アグラのホテルでは、停電になると自家発電機を動かしていたようだ。ここアウランガーバードの宿ではそれも無く、温水が出なくなる。


食事習慣など  インドの食事は、まずVegかNon-Veg、つまり野菜だけの料理か、肉や卵を使う料理か、の選択から始まる。Veg専門のレストランも多い。どうも、Vegの方がNon-Vegよりハイクラスという感覚があるようだ。Vegだけを食べるベジタリアンの中にはNon-Vegの人と同席するのを好まない人もいるという。それと、ビールなどアルコール飲料も出さないレストランが多い。飲酒は「下等な」習慣と考えられているようで、飲んべいには肩身が狭い国である。ビールなどを注文できるレストランは、Permit Roomあり、などと書いてある。もっとも、Permit Roomの無いレストランでビールはあるか?と聞いたら、となりのBarからビールをコップに入れて持ってきてくれたことがあった(グワハチ)。コップのまわりを紙ナプキンでくるんで中身が見えないようにして・・・酔って大声を出したりくだを巻くなどという(どこかの国ではふつうの)光景は皆無である。


食事の時にナイフやフォークを使わず、右手の指で器用にカレーとご飯を混ぜて食べるのが伝統的なテーブルマナー。でも、ナイフやフォークも一般的になっていて、左手を使うのもはばかる必要はなさそうだ。右の写真はメガラヤの観光バスで一緒になった青年と簡易食堂で食事をしたときに食事の様子を撮影させてもらったもの。


トイレの習慣  もっとも伝統的なトイレは、日本式の便器の前部分がない単純な形である。そしてトイレットペーパーが置いてない。手の届く低い位置に水道の蛇口があり、取ってのついたプラスチックの小さな容器が置いてある。これに水を入れ、水と左手でおしりを洗う。その左手を水で洗う。便器の中の排泄物も水で洗い流す。この習慣は、高貴・卑賤にかかわらずインドでの伝統的習慣のようである。(おしりを水で洗った後、濡れたおしりをどうやって乾かすかはわからない。 ([12月15日注] その後、あるインド人青年に聞いたところでは、きれいな水が少しついていてもすぐ乾くから気にしない、とのことである。)

この方法の改良版として、「おしりシャワー」が設置してあるところもある。花壇で水まきに使うようなノズル付きホースがあり、そのノズルのレバーを押すと勢いよく水が出る。これだと水流が強いので左手を汚さずにすむのではないか?日本に「ウォッシュレット」というような名前のトイレがあるが、あの感じに近い。

もちろん、トイレットペーパーを設置しているところも多く、設置していなくてもホテルにチェックインしたときに渡してくれる。西洋式の腰掛けタイプの便器も増えている。

寝台列車の場合、伝統式と西洋式の二つのタイプがある。便器の下はがら空きで列車の下の大地が高速で動くのが見えるのでちょっと怖い。ものを落としたらもちろんアウト。

街中に公衆トイレはあるが数は少ない。特に女性用は少ないように思う。男性のタッションはごく普通に見られる。

高級ホテルではもちろん欧米・日本なみのトイレ設備があるが、観光に出かけて現地で用を足す場合、インド伝統様式を利用せざるを得ないことを想定した方が良い。また、トイレットペーパーを常にポケットに入れておくのがインド旅行の秘訣である。お腹をこわす旅行者が多いので、移動中トイレの場所を常に頭にいれておくことも必要かもしれない。

「インド式」は、最初はちょっと抵抗があるけれど慣れれば紙だけでごしごしするよりよほど合理的だ。水を使う方が紙だけよりおしりにやさしいのではないか?



12/12( 水) エローラで岩山を削りだした精巧な寺院、窟院に驚嘆


久美子の回復  昨夜から食欲が出て今朝はすっかり元気そう。でも、今後の旅で予定していた夜行寝台はすべて止めることにして旅行日程を変更。まず、朝一番にアウランガーバード鉄道駅そばのチケット予約センターに行って鉄道チケットを解約。今後は飛行機で移動することにしてホテルの旅行センターでチケットを予約した。


砦の登山  
午前11時、ハイヤーでエローラ観光出発。途中、平原に褐色の富士山型の小山が見える(右写真)。インドの砦の中では三指入るというダウラターバード(Daulatabad) の砦である。ふもとから頂上まで標高200m以上はあるだろうか、小高い丘の上に石垣の建築物が見える。これは面白そうだ、と私は元気。久美子は「エローラ観光にエネルギーをとっておく」とふもとで待機することに。私は石垣に囲まれた登山道を登る。途中階段があり、深い壕に水が貯まっている。これはなかなか堅固な砦だ。しばらく行くと、地下室に入る。真っ暗な中を手探りで進む。ちょっと怖い。石段を登ると再び登山道。頂上近くに大きな建築物がある。

ここで帰ろうかと気がせくが、そこで出会ったインドの青年がまだ上があるよ、と誘われる。頂上の石造物の上に大砲があり記念撮影。ここから360度の展望ができる。おおきな砦である。その周囲には緑もまばらにデカン高原の平らな褐色の大地がある。下で待っている人を思い下山開始。また、あの真っ暗な地下道を通りふもとへ。登山時間は1時間半ぐらいでありすっかり汗をかいてしまった(写真上は砦の頂上からの展望)。


エローラ窟院 南  そこから30分のドライブでエローラ石窟群に着く。石窟群はほぼ南北に並んで南側に第1〜15窟、中央に大きな第16窟、そして北側に第17〜34窟がある。ガイドブックに従ってその主要部分を中心に見学する。南側の15〜10窟から見学。岩山をくりぬいて柱と壁、部屋がアパートメント建築のように2階〜3階建てになっている。
急な階段を登っていくので結構脚力が必要だ。第15,14窟はヒンズー寺院のようで、彫像がふくよかで明るい。カジュラホーのヒンズー寺院の彫像に似ている。
13〜10窟は仏教寺院であり、ブッダの瞑想の姿の彫像が中心である。アウランガーバードの仏教寺院から来たという赤い衣をまとった青年僧が解説してくれた。ブッダの瞑想像の向かって左にはもくれん(モッガラーナ?)右にはシャーリプトラ(舎利子、サーリプッタ)の2代弟子の立像がある(写真)。
それと直角の壁には3人の座像がある。中央が、ブッダの父、その向かって右に母のマーヤ、左に父の兄弟(ブッダの叔父)の像ということだ。これらの像は鼻や顔など意識的に破壊されたと思われる跡が見られる。青年僧によると、イスラム教徒が破壊したという。


エローラ窟院 中央のカイラーサナータ寺院  石窟群の中央にみごとな寺院建築が建っている。といっても、これは「建てて」「築いた」のではない、岩山を削りだしてその壮大な寺院を造り上げたのだ。6世紀頃、およそ100年かけて完成された。門を入ると左右に大きな象。中央の寺院を囲んで回廊がある。寺院の外壁には精巧な彫像が数限りなくある。これらも、他の場所で制作した後で設置したのではなく、すべてその場所で削りだしたのだ。先生のような感じのインド人家族が話しかけてきた。「世界七不思議と言うが、このエローラ窟院を加えて世界八不思議とすべきだ」と言う。

この頃から久美子とはぐれて、とてもお腹がすいてきた。ひとりでそばのレストランで昼食をとる。さて、久美子を捜さねば、と歩いていると、土産物の押し売り青年がついてくる。自分はワイフを捜すのに忙しいのだと言うと、「おまえのワイフはあそこだよ」と。なるほど、壮大なカイラーサナータ寺院を取り巻く岩山の上に見慣れた姿を認める(でも、どうして押し売りが知っているんだ?)。では、私もと登山開始。この岩山の上から見ると、その寺院の壮大さがよくわかりあらためて感嘆した(写真下)。寺院の上には四頭の獅子もいる。その生き生きした姿も面白い。名残を惜しみながら下山した。
  エローラ遺跡の中央にあるカイラーサナータ寺院。岩山を削りだして造ったという奇跡の窟院である



エローラ窟院 北  われわれのハイヤーを見つけ、最も北の第31〜34窟まで車で行く。ここは、ジャイナ教寺院で、ヒンズーとも仏教とも違う彫像と雰囲気である。見学しているとどこからともなくインド人が寄ってきていろいろ説明してくれる。
マハビーラ(?)が中心の像のようで、ブッダが傘一つをかぶっているのに対してマハビーラは傘三つだと解説してくれる。また、エローラ窟院ではここだけ壁画が見られると教えてくれた。暗くてよくわからないが、デジタルカメラの感度を最高(ISO1600)にして撮影ができた。極彩色で当時華やかな絵だったと思われる。再び車に乗り、第29窟へ。ここは大きなヒンズー寺院で大きな彫像がたくさんある。夕日が洞窟の奥まで差し込んできた。


エローラを後に  夕日がきれいなエローラを後にしてタクシーでアウランガーバードに帰る。エローラの石窟、とくに中央の寺院の光景は一生忘れることはないであろう。久美子は、アグラのタージ・マハールも感動したが、エローラの石窟寺院はそれと同じぐらい感動した、と。   「次へ」


Page Top                 Next